中国語で「いただきます」「ごちそうさまでした」はなんという?食事のマナーやあいさつ、文化の解説
日本では、食前と食後に感謝を込めて「いただきます」「ごちそうさまでした」という文化があります。幼い頃から繰り返して言う中で、習慣化している人も多いでしょう。海外に行った時にも言わないと物足りなく感じるかもしれません。しかし、日本の文化である「いただきます」と「ごちそうさまでした」にあたる言葉は海外に存在するのでしょうか。
今回は、中国語でそもそも「いただきます」や「ごちそうさまでした」にあたる言葉が存在するのか、似たような言葉や食前、食後に使えるあいさつがあるのかなど、食事のマナーやあいさつ、文化について解説します。
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1 中国の食事マナー
(1) 「いただきます」「ごちそうさまでした」は存在する?
結論から言うと、中国語には「いただきます」「ごちそうさま」にぴったり当てはまる言葉がありません。
日本語の「いただきます」や「ごちそうさまでした」には、食材の命をいただくことへの感謝の気持ちや、食材を育てた人、料理を作ってくれた人など食事が出されるまでに関わった人々への感謝の気持ちが込められています。
国に関係なく、食事に関する感謝の気持ちは人それぞれが持っていると思いますが、中国語をはじめとする外国語では、日本語の「いただきます」や「ごちそうさまでした」のような特定の言葉を口にする習慣がないことがほとんどです。
中国では「いただきます」や「ごちそうさま」といった言葉がないため、直接食事を食べ始めるのが一般的です。
(2)目上の人から食べ始める
中国では、年上を敬う儒教が根付いているため目上の人が先に食べ始めるのがマナーです。主賓や年長者が箸をつけてから箸をつけるよう気をつけましょう。
(3)円卓での注意点
中国料理といえば円卓。回転台を回しながら大皿料理をみんなで取り分けます。そんな円卓にも、日本のように上座や下座の概念があります。上座は入り口から遠い席で、主賓や年長者らが座ります。反対に、下座は入り口から近い席です。招待された側であれば、案内された位置に座りましょう。
回転台は時計回りに回します。食事を取る場合は、はじめに主賓や年長者など目上の人(上座に座っている人)から取るのが基本です。自分の番が回ってきたら、回転台を時計回りに回して料理を自分の正面に移動させ、座ったまま取り皿に料理をとってください。立って料理を取るのはよくありません。また、回転台の上は共有スペースですので、自分の箸やグラス、取り皿などは乗せないようにしましょう。
取り皿は料理の味が混ざらないよう、何枚取り替えても問題ありません。遠慮なく従業員に取り替えてもらいましょう。また、茶碗以外の取り皿は持ち上げずに、円卓に置いたまま食べましょう。
(4)食事を少し残した方がいい?
日本では料理を残さず食べることが良いこととされますが、中国では料理を少しだけ残すのが礼儀だと聞いたことがある人もいるでしょう。これは「食べきれないほど料理をたくさん提供してもらった」「お腹いっぱいになった」という気持ちを表します。実際、食べきれないほどの料理を注文することが中国流のおもてなしですので、「面子(メンツ)」を重んじる中国でそれを食べ切ってしまうと、相手の「面子」が立ちません。
しかし、SDGsがうたわれる近年では「食べ残し」に対する世論が中国国内でも少しずつ変わっています。フードロスに対する意識が高くなり、中国政府も食べ残しを減らすよう発信するようになりました。2021年には食べ残しを禁止する「反食品浪費法」が可決され、過剰な量の食べ残しをした場合は飲食店側が食べ残しの処分費用を請求できるようになりました。そのため、やみくもに大量の料理を注文することは以前より減ってきており、料理は残さない方が良いという考え方も広まりつつあります。料理が食べきれなかった場合はテイクアウト(打包(dǎbāo):ダーバオ)をすることが多いです。
とはいえ、主催者のおもてなしが十分であったことを示すためにも、円卓を複数人で囲んで食べるような食事の席では、回転台の上の大皿料理を全てきれいに食べ切ってしまうより少し残す方が良いかもしれません。ただし、取り皿に取り分けた分は食べ切るようにしましょう。
2 「いただきます」のように食前に使えるあいさつ
◇我吃了! wǒ chī le! 「食べるね」
◇那,我先吃了。 nà, wǒ xiān chīle. 「じゃあ先に食べるね」
「食べますね」「お先にいただきます」と、相手に食べ始めることを知らせる意味での「いただきます」に近い言葉です。例えば自分以外の人が同じ空間にいて他のことをしているため同時に食べ始められないときなどに使います。
◇你们先吃。 nǐmen xiān chī. 「どうぞお先に食べてください」
相手に先に食べてもらうことを促す表現です。例えば相手に敬意を払って先に食べてほしいときや、何かの準備でまだ手が離せず先に食べていてほしいときなどに使えます。
◇(我要)开动了。 (wǒ yào) kāidòng le. 「(食べ)始めます」
“开动 (kāidòng)”は直訳すると「動かす、出発する」などの意味で、「さぁ始めるぞ」というようなニュアンスです。
「いただきます」にぴったり当てはまる言葉ではありませんが、日本のドラマやアニメなどであえて訳しなければならない場合は、“我要开动了(wǒ yào kāidòng le)”、“我开动了(wǒ kāidòng le)”、“开动了(kāidòng le)”などと訳されることが多いです。
一方で、台湾では“开动 (kāidòng)”(台湾で使われる繁体字で“開動”)に「食べ始める」という意味があるようです。いずれにしても、実際の生活で口にすることはほとんどありません。
◇好香啊!/ 很香啊! hǎo xiāng a!/ hěn xiāng a! 「いいにおい(=おいしそう!)」
直訳すると「香りがいい」という意味ですが、「香りからしておいしい=おいしそう」という意味です。食事の前に「おいしそう!」と食事に対する期待を伝えることができます。 また、実際に料理を食べて香りが良かったときにも味の感想として使うことができる表現です。
◇好诱人啊! hǎo yòu rén a!「おいしそう」
“诱(yòu)”は日本語の誘惑の「誘」で、「诱人(yòu rén)=人を惹きつける、人を魅了する」という意味です。食事の前に使うことで「なんておいしそうな食事なの」というニュアンスになります。こちらも食事に対する期待を伝えることができる表現です。
◇吃饭了! chīfànle!「ご飯ですよ」
◇(我要)开饭了! (wǒ yào) kāifànle!「食事を始めましょう」
どちらも食事が始まる呼びかけに使える表現です。食事の用意ができて食卓に人を集めたいときなどに使えます。
◇饭好了! fàn hǎole!「ご飯できたよ」
「好了(hǎole)=できた」という意味があります。そのため「ご飯できたよ〜」と食卓に人を集めるときなどに使えます。
◇吃吧,吃吧! chī ba, chī ba! 「食べて食べて!」
◇来,吃吧! lái, chī ba!「ほら、食べよ!」
◇开始吃吧! kāishǐ chī ba!「さあ、食べましょう!」
「食べよ!」という風に、食べ始めを促す言葉です。主催者や料理を作った人らが使うのが一般的です。
3 「ごちそうさまでした」のように食後に使えるあいさつ
◇(我)吃饱了。 (wǒ) chī bǎole.「お腹いっぱいになりました」
◇(我)已经吃饱了。(wǒ) yǐjīng chī bǎole.「もうお腹いっぱいです」
「已经……了(yǐjīng……le)=すでに、もう」「饱(bǎo)=お腹いっぱいである」。 「お腹がいっぱいになりました(もうこれ以上食べれません=ごちそうさまでした)」と、食事を終える際に使える表現です。
◇今天的菜真好吃。 jīntiān de cài zhēn hào chī.「今日の料理は本当においしかった」
「今天( jīntiān)=今日」「菜(cài)=料理」「真(zhēn)=本当に」。
「今日の料理は本当においしかった」と、食事に満足していることを伝えることができる表現です。
◇吃的非常好。 chī de fēicháng hǎo.「(食事が)非常に良かったです」
こちらも先ほどと同様、食事に満足していることを伝えることができる表現です。
◇您做的菜真不错! nín zuò de cài zhēn búcuò!「お料理が本当にお上手ですね」
「真不错(zhēn búcuò)=本当にいい、間違いない」。
料理を作ってくれた人の腕前を褒めるときに使える表現です。「料理が本当に上手=おいしかった=ごちそうさま」というように食後に使うこともできますし、食事中にも「料理が上手=おいしい」と伝えるためにも使うことができます。
4 食事中に使えるあいさつ
ここでは食事中に使えるあいさつや掛け声を紹介します。食事中に使える味の感想や食感の表現についてはこちらの記事にまとめていますので、合わせて参考にしてみてください。
◇干杯! gānbēi!「カンパイ!」
「ガンベイ!」と発音します。中国では1人でお酒を勝手に飲まずに、乾杯で相手を誘って一緒に飲むのが基本です。そのため、日本での食事の場よりも乾杯の頻度が高いです。
◇多吃点儿! duō chī diǎn er!「たくさん食べて!」
中国人は食に対する意識やこだわりが強く、しっかり食べることをとても重視します。そのため、「しっかりと食べているか」「たくさん食べて」と、相手にもっと食べるよう勧めることがよくあります。日本人からすると、ひっきりなしに料理を勧めてくることをお節介だと感じる人もいるかもしれませんが、これは相手を親しいと思っているからこその言動で、おもてなしをしたいという気持ちからくるものです。
“多吃点儿!(duō chī diǎn er!)”と言われたときは“好,谢谢(hǎo, xièxiè)”(はい、ありがとうございます)と答えたり、これ以上食べきれない場合は“(已经)吃饱了((yǐjīng) chī bǎole)”と答えたりすることができます。
◇再来一份。 zàilái yí fèn.「おかわりをお願いします 」
◇再来一瓶 。 zàilái yì píng.「(飲み物を)もう一本お願いします」
◇再来一杯。 zàilái yì bēi.「(飲み物を)もう一杯お願いします」
おかわりしたいときに使える表現です。
“再来一份(zàilái yí fèn)”はもう一人前ほしい時に使います。 “再来一瓶(zàilái yì píng)”の“瓶(píng)”は瓶に入った液体の数を数えるときに使う量詞なので、ビールや瓶に入ったジュースなどのおかわりがほしいときに使います。 “再来一杯(zàilái yì bēi)”は日本語の「もう一杯」と同じ意味です。
5 まとめ
今回は、中国語に「いただきます」や「ごちそうさまでした」は存在するのか、食前や食後に使える似たような言葉はあるのか、食事に関するあいさつやマナー、文化について紹介しました。
食文化が豊かで食に対するこだわりが強い中国では、食事が大切なコミュニケーションツールです。日本に「いただきます」「ごちそうさまでした」という特有の文化があるように、中国にも中国ならではの食に関する文化があります。互いの文化にリスペクトを示しつつ、食事を通して良い関係を築いていけたらいいですね。ぜひ今回紹介した内容を食事の場で生かしてみてください。
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