第9課 能願動詞(助動詞 )
中国語にも能願動詞という助動詞がいくつもあります。「~しなければならない」「~したい」などの動詞にくっ付けて自分の願望やできるできないを表します。中国語の能願動詞をマスターすれば、自身の中国語の奥行きがかなり広がると思います。ぜひ覚えてくださいね!
もくじ
1、能願動詞を用いる動詞述語文
(1)肯定文の作り方
(2)否定文の作り方
(3)疑問文の作り方
2、能力・許可の能願動詞
(1)「能」の「~できる」
(2)「可以」の「~できる」
(3)「会」の「~できる」
3、願望・意欲の能願動詞
(1)「想」の「~したい」
(2)「要」の「~したい」
(3)「肯」の「すすんで~する」
(4)「敢」の「勇気をもって~する」
4、当為の能願動詞
(1)「应该」の「~すべき」
(2)「得」の「~しなければならない」
(3)「要」の「~しなければならない」
(4)「该」の「~すべき」
5、評価の能願動詞
(1)「值得」の「~する価値がある」
(2)「可以」の「~してごらん」
6、蓋然性の能願動詞
(1)「会」の「~のはずだ」
(2)「要」の「~のはずだ」
(3)「该」の「~するだろう」
ポイントはここだ!
1、能願動詞を用いる動詞述語文
「~できる」「~てもよい」「~しなければならない」「~すべきだ」「したい」など願望や可能などを言いたいとき、中国語には「能願動詞」という助動詞として機能する動詞があります。
(1)肯定文の作り方
たくさんある能願動詞(助動詞)のうち、文法の説明のために、「想」と「要」を使って勉強してみましょう。
今回使う能願動詞(助動詞)
「想xiǎng」…~したいと思う、~するつもり
「要yào」…~しなければならない、~したい
肯定文の場合は、能願動詞は助動詞ですので、動詞の前に置くのが基本です。
文法:主語+(副詞)能願動詞+動詞+目的語 |
wǒ xiǎng qù běi jīng 。 我想去北京。 | 私は北京に行きたいです。 |
wǒ yào hē hóng chá 。 我要喝红茶。 | 私は紅茶を飲みたいです。 |
wǒ fēi cháng xiǎng qù yīng guó liú xué 。 我非常想去英国留学。 | 私は非常にイギリスへ留学に行きたいです。 |
(2)否定文の作り方
能願動詞の否定文の場合には、能願動詞の前に「不」という否定形を置きます。「没想到~(思いもよらず~)」という「想」の前に「没」が入る中国語もありますが、この「想」は助動詞ではなく動詞「~だと考える」ですし、基本的には能願動詞の前には「不」を置きます。
文法: 主語+不+能願動詞+動詞+目的語 |
wǒ bù xiǎng hē chá 。 我 不想喝茶。 | 私はお茶を飲みたくないです。 |
wǒ bù xiǎng xué xí yīng yǔ 。 我不想学习英语 。 | 私は英語を勉強したくないです。 |
(3)疑問文の作り方
能願動詞の疑問文の作り方には2種類あります。「吗」を最後にくっつける諾否疑問文と、質問したい部分を繰り返す(「要不要」など)反復疑問文です。
文法1: 主語+能願動詞+動詞+目的語+吗? |
nǐ xiǎng huí jiā mɑ ? 你想回家吗? | あなたは家に帰りたいですか。 |
nǐ xiǎng mǎi tái xīn diàn nǎo mɑ ? 你想买台新电脑吗? | あなたは新しいパソコンを買いたいですか。 |
文法2: 主語+能願動詞・不・能願動詞+動詞+目的語? |
nǐ yào bú yào qù gōng yuán ? 你要不要去公园? | あなたは公園に行きたいです。 |
2、能力・許可の能願動詞
さて、ここからは、さまざまな能願動詞をご紹介してきます。たくさんありますが、意味の違いを理解して覚えておきましょう。覚えてすぐは使い方がとても難しいと思いますが、たくさんの中国語の文章に触れることで、細かなニュアンスの違いを理解していくことができますよ!
能力・許可の能願動詞として、今回はよく使われる以下を紹介します。
「能 néng」…身体や知恵の能力が備わって「 ~できる 」
「可以 kě yǐ」…客観的な事情・条件のもとで許され「~できる」
「会 huì」…学習、訓練、練習などによって「~することができる」
それぞれ使い方が違います。一つ一つ見ていきましょう。特に、「能」と「会」の違いは試験で問われる問題としては鉄板ですよ!
(1) 「能 néng」の「 ~できる 」
「能」の「~できる」は、身体的または知恵能力があって何かができるときに用います。ですので、何かの目標値や数字が文章に入っていることもあります。目標に対して基準を満たしている「できる」は「能」を使います。また、「可以」もここでは使用できます。
wǒ yì tiān néng ( kě yǐ ) xiě liǎng piān yīng wén wén zhāng 。 |
我一天能(可以)写两篇英文文章。 |
私は一日に2篇の英語の文章を書くことができます。 |
tā néng ( kě yǐ ) yì kǒu qì pǎo liǎng gōng lǐ 。 |
他能 ( 可 以 )一口气跑两公里。 |
彼は一気に2キロを走ることができます。 |
(2) 「可以 kě yǐ」の「~できる」
「可以」の「~できる」では、許可を表します。「~できる」いうよりは「~してもよい」というニュアンスの方が正しいですね。ただし、(1)の身体的や知恵能力で「~できる」という場合にも用いることができます。逆に「能」はこの許可も表すことができます。
zhèr kě yǐ ( néng ) xī yān mɑ ? |
这儿可以(能)吸烟吗 ? |
ここはたばこを吸ってもよいですか。 |
zhè jiān fáng jiān kě yǐ ( néng ) jìn qù mɑ ? |
这间房间可以(能)进去吗? |
この部屋は入ってよいですか。 |
「能」と「可以」について
「能」と「可以」は、両方とも「~できる」と訳しますが、「能」は「できる」、「可以」は「~してもよい」と訳した方が分かりやすいですね。両方とも身体的に何かをできる場合、知恵能力があり何かができる場合、そして許可を表す場合に使うことができます。ただし、中国語会話の中では、許可は比較的「可以」を用いることが多いです。「来ることができる」「お酒をたくさん飲むことができる」などは「能」を用います。「你明天不能来吗?(明日来ることができないの?)」などはよく使う中国語です。
(3) 「会 huì」 の「~できる」
「会」の「~できる」は、学習、訓練、練習などによって「~することができる」ことを表します。つまり、何かを習得して得たものについて、「会」を用います。
wǒ huì shuō zhòng wén 。 我会说中文。 | わたしは中国語を話せます。 |
tā bú huì yóu yǒng 。 她不会游泳。 | 彼女は泳げません。 |
wǒ bú huì kāi chē 。 我不会开车。 | わたしは車を運転することができません。 |
「能」と「会」の違い
「会」の場合は、何かを習得したものについて「~ができる」と表します。例えば、「〇我会做饭(私は料理ができます)。」と言いますが、「×我能做饭。」とはいいません。「能」は身体的もしくは知恵能力が備わって何かの目標に対して「できる」ことを表します。ですので、「能」の場合は、距離、数、目標値、目的の場所などが文に入っていることが多いです。「会」は、習得してできる行動自体を指します。ですので、以下の例文は両方とも正しいことになります。
〇我会游泳。(私は水泳ができます。)
〇我二分钟能游200m。(私は2分間で200m泳ぐことができます。)
3、願望・意欲の能願動詞
願望・意欲でよく使われるのは以下の能願動詞(助動詞)です。
「想 xiǎng」…~したい、~しようと思う
「要 yào」…~ したい、~するつもりだ
「肯 kěn」…すすんで~する、~することを承知する
「敢 gǎn」…勇気をもって~する、思い切って~する
これらの願望・意欲の能願動詞の否定文には、注意が必要です。「想」「要」「肯」「敢」の否定形、「不想」「不要」「不肯」「不敢」のすべてが「~したくない」という意味ではありません。否定形にすると意味が違ってくるものがありますので、注意しましょう。
(1) 「想 xiǎng」の「~したい」
「想」は願望「~したい」を意味します。「想」の字のごとく願うという意味合いに近いと思います。また、中国語の「想」には「考える」や「思い出す」という意味もありますので、区別がつくように知っておきましょう。
nǐ xiǎng jié hūn mɑ ? 你想结婚吗? | あなたは結婚をしたいですか。 |
wǒ xiǎng hē kě lè 。 我想喝可乐。 | 私はコーラを飲みたいです。 |
(2) 「要 yào」の「~したい」
「~したい」の「要」の場合、「必要」のようなニュアンスが入っています。また、「要」の漢字は他にもいろいろな意味があります。「~するつもり」という意味もあれば、「~しなければならない」という意味もあります。「要」は動詞としても「ほしい」や「要求する」といった意味もあります。
wǒ yào chī bīng jī líng 。 我要吃冰激凌。 | 私はアイスクリームを食べたいです。 |
tā yào huí jiā 。 他要回家。 | 彼は家に帰りたがっています。 |
要の使い方について
先述したように、中国語の「要」には能願動詞だけでもほかの意味があります。
願望の「要」…~したい
意思の「要」…~するつもり(~したいというニュアンスを含む)
当為の「要」…~しなければならない
蓋然性の「要」…のはず
また、動詞としても色々な使われ方をします。「ほしい」や「要求する」以外にも、「想要」で「~したいと思う」「~しようと思う」という動詞としての使われ方もあります。中国語の「要」には要注意が必要ですね!
また、否定形では「不要」となりますが、これは中国語で禁止の意味をあわらします。ですので、願望の「要」は「~したい」という意味を否定文にする場合、「不想」を使います。
(3) 「肯 kěn」の「すすんで~する」
「肯」は「すすんで~する」「~することを承知する」という意味があります。中国語の「肯」はもともと動詞では「同意する」「承諾する」という意味があります。日本語の「肯」の意味に近いですね。ちなみに、「肯定的」は日本語で「確実だ」という意味で会話の中でよく使われます。
tā kěn bāng zhù bié rén 。 他肯帮助别人。 | 彼はすすんでひとを助けます。 |
tā bù kěn huí jiā 。 他不肯回家。 | 彼は家に帰ろうとしないです。 |
jí biàn zài yǒu qián , tā yě bù kěn bāng zhù qióng rén 。 |
即便再有钱、他也不肯帮助穷人。 |
いくら金を持ってても、 彼は 貧しい人々を助けようとしないです。 |
(4) 「敢 gǎn」の「勇気をもって~する」
「敢」は「勇気をもって~する」「思い切って~する」という意味の能願動詞です。日本語にもある「勇敢」の「敢」の字ですね。肯定文では「不敢」となり、「~しする勇気はない」となります。
wǒ yè lǐ bù gǎn yí ge rén chū mén 。 我夜里不敢一个人出门。 | 私は夜一人では外出する勇気はないです。 |
wǒ bù gǎn cí diào xiàn zài de gōng zuò 。 我不敢辞掉现在的工作。 | 私は今の仕事を辞める勇気はないです。 |
tā gǎn fù zé rèn 。 他敢负责任。 | 彼はすすんで責任を負います。 |
4、当為の能願動詞
当為は「~すべき、~ねばならない」という意味の能願動詞です。以下よく使われるものを紹介します。
「应该 yīng gāi」…(当然)~すべき
「得 děi」…(義務的な意味で)~しなければならない、~すべき
「要 yào」…(自発的に)~しなければならない、~する必要がある
「该 gāi」…(実際上、道理上からして)~すべき
これらの違いを理解しておくことに加えて、否定形の文の意味もしっかりと理解しておきましょう。
(1) 「应该 yīng gāi」の「~すべき」
「应该」の「~すべき」は、「当然」という意味が入っています。よく中国語でいう「应该的」は「当然だよね」という意味で会話の中で使われたりします。否定形は「不应该」で「~すべきではない」という意味になります。
wǒ men yīng gāi bāng zhù tā 。 我们应该帮助他。 | 私たちは彼を助けるべきです。 |
nǐ yīng gāi qù kàn ěr bí hóu kē 。 你应该去看耳鼻喉科 。 | あなたは耳鼻科に見てもらうべきです。 |
nǐ bù yīng gāi hé tā chǎo jià 。 你不应该和他吵架。 | あなたは彼と喧嘩すべきではないです。 |
(2) 「得 děi」の「~しなければならない」
この「得」の「~しなければならない」は、義務的な意味が入っています。実は、この「得」の助動詞は「~することが許される」という意味があるので、文章によって意味を考えなくてはなりません。
「~しなければならない」の「得」の否定文「不得」は反語文でよく用いられ、「~することが許される」の「不得」は禁止を表します。ですので、「~する必要がない」「~しなくてもいい」は「不用」を、「~すべきでない」は「不应该」を用います。
wǒ děi qù kàn kan wǒ fù mǔ 。 我得去看看我父母。 | わたしは両親を会いに行くべきです。 |
wǒ děi hǎo hǎo xué xí 。 我得好好学习。 | わたしはしっかり勉強しなければならないです。 |
nǐ yǐ hòu děi zhù yì diǎnr 。 你以后得注意点儿。 | 今後、気を付けなければだめだぞ。 |
(3) 「要 yào」の「~しなければならない」
当為の「要」は自主的で、必要な「~しなければならない」です。否定文では、「不要」は「~してはいけない」という意味ですので、自主的で必要なことを「しなくてもいい」と言いたい場合は「不用」や「不必」を用います。
wài miàn zài xià xuě 、 nǐ yào xiǎo xīn diǎnr 。 |
外面在下雪、你要小心点儿。 |
外は雪が降っているから、気をつけないといけないよ。 |
wǒ men yào xiàng tā xué xí 。 |
我们要向他学习。 |
我々は彼に学ばなければならないです。 |
(4) 「该 gāi」の「~すべきだ」
この「~すべきだ」は事実上もしくは道理上のことを言います。つまり、とある事実や道理上のことをについて、「もう(夜遅いから)帰らなければならない」というように、何か事実上、道理上当然~すべきというときに使います。ちなみに、「不该」は「~してはいけない」という意味になります。
wǒ gāi zǒu le 。 我该走了。 | もう帰らなくては |
míng tiān gāi kāi shǐ le 。 明天该开始了。 | 明日は始めなくては |
5、評価の能願動詞
評価のの願動詞の以下2つを紹介します。
「值得 zhí dé」…~する価値がある(客観的に叙述)
「可以 kě yǐ」…~してごらん(相手に向かってすすめる)
(1) 「值得 zhí dé」の「する価値がある」
「值得」は字の如く「~する価値がある」と言う意味があります。否定形は「不值得」や「值不得」で「~する価値がない」「~するにはつまらない」という意味になります。
zhè bù diàn yǐng zhí dé yí kàn 。 这部电影值得一看。 | この映画は一見する価値があります。 |
tā de tí yì bù zhí dé cān kǎo 。 她的提议不值得参考。 | 彼女の提案は参考に値しません。 |
(2) 「可以 kě yǐ」の「~してごらん」
「可以」にもいろいろな意味がありますが、ここでは相手に向かって何かをすすめるときに使う「可以」です。
zhè běn xiǎo shuō hěn hǎo kàn , nǐ kě yǐ dú yi dú 。 |
这本小说很好看、你可以读一读 。 |
この小説はすごく面白い、読んでごらんなさい。 |
zhè jiàn shì nǐ kě yǐ hé tā shāng liang shāng liang 。 |
这件事你可以和他商量商量。 |
この件について彼と相談してごらん。 |
6、蓋然性の能願動詞
蓋然性は「~のはずだ、にちがいない、~だろう」を表します。よく使う3つの助動詞を紹介します。
「会 huì」…~のはずだ、だろう
「要 yào」…~ のはずだ( 会 huì より強い意志・欲求を表す)
「该 gāi」…~するだろう
(1) 「会 huì」の「~のはずだ」
「会」は「~できる」という能願動詞もありますが、この「~のはずだ」「~だろう」という助動詞としても使用されます。この「会」は、どちらかというと「(起こりうることを予想して)~だろう」の意味が強いです。
jīn tiān huì xià yǔ 。 今天会下雨 。 | 今日は雨がふりそうです。 |
tā bú huì lái le 。 他不会来了。 | 彼はもう来ないだろう。 |
tā bú huì bù lái 。 他不会不来。 | 彼は来ないはずないです。 |
(2) 「要 yào」の「~ のはずだ」
「要」の「~のはずだ」は、「会」に比べるともう少し強い意思が感じられる文になります。ですので、「他今天回来的」と「他今天要来的」の違いは、一つ目は「かれは今日来るだろう」で、二つ目は「彼は今日来るにちがいない」となるわけです。
jīn tiān yào xià yǔ 。 今天要下雨。 | 今日は雨が降るだろう。 |
tā jīn tiān yào lái de 。 他今天要来的。 | 彼は今日来るにちがいない。 |
(3) 「该 gāi」の「~するだろう」
この蓋然性の能願動詞「该」の「~するだろう」には、「当然~するだろう」「きっと~のはずである」というニュアンスが含まれています。当為の「~すべき」の「该」と含まれているニュアンスは似ていますね。
dōu zhè me wǎn le、tā gāi huí lái le 。 都这么晚了、他该回来了。 | もう遅いし、彼も戻ってくるころだろう。 |
文法の注意
1、能願動詞(助動詞)は動詞の前に置く。否定文では主に能願動詞の前に「不」をもってくる。過去のことで「没」をくっつける場合もある。
同じ漢字の能願動詞でも違う意味を表す
■「会」
①~できる
②~のはずだ、~だろう
■「要」
①~したい
②~しなければならない
③~のはずだ
■「可以」
①~できる
②~してごらん
■「该」
①~すべき
②~するだろう
能力・許可の「会」と「能」の違い
「能」は身体的もしくは知恵能力が備わって何かの目標に対して「できる」ことを表します。ですので、「能」の場合は、距離、数、目標値、目的の場所などが文に入っていることが多いです。「会」は、習得してできる行動自体を指します。
否定文にすると意味が違ってくることもある
「~したい」の「要」の否定形は「~したくない」ですが、「不要」は禁止を表します。そのようなときには、「不用」や「不想」を言い換えて使います。