第16課 方向補語
今回は、中国語の方向補語についてご紹介します。この方向補語というのは、動詞のあとにくっついてその方向性を示す補語ですが、実際に私が中国人と中国語で話をするときには、漢字2つか3つが並ぶ熟語のように覚えたり使ったりしていました。方向補語はよく使われますし、日常にもたくさん出てきます。仕組みがわかれば、さらに面白いですよね!
もくじ
1、方向補語について
(1)単純方向補語
(2)複合方向補語
2、方向補語の肯定文
(1)基本の文型
(2)語順について
3、方向補語の否定文
4、方向補語補語の疑問文
ポイントはここだ!
1、方向補語について
中国語の方向補語とは、動詞の後に置き、その動詞の方向について表す補語です。「上」「下」のような方向を直接示すような補語だけでなく、「来」「去」のような方向性を含んだ動詞の補語もあります。「動詞+方向補語」の組み合わせも色々あります。
方向補語には、
■単純方向補語…「来」「去」「回」「过」など
■複合方向補語…「上去」「回来」「过去」「下来」など
があります。主に「動詞+方向補語」の語順で用いられます。しかし、目的語の要素や動詞の動作の仕方により語順が変わってきますので注意をしましょう。
□方向補語の肯定文
□方向補語の否定文
□方向補語の疑問文
も紹介します。
(1)単純方向補語とは
単純方向補語とは、方向補語の中でも漢字1文字のもののことを言います。動詞の後にその1文字をくっつけて、動作をさらに詳しく表します。主に、「来」「去」といった、例えば「入って来る」や「走っていく」のような「~くる」「~いく」の単純方向補語と、それ以外の直接方向性を示す「上」「下」などのものがあります。日本語も、動詞と方向が一緒になって使うことがありますよね。例えば、「のぼっていく」や「走って来る」のように。
文法: 動詞+方向補語 |
cóng qián miàn zǒu lái yí gè rén 。 从前面走来一个人。 | 前から1人の人がやって来る。 |
yīng fēi shàng tiān kōng le 。 鹰飞上天空了 。 | 鷹が空へ飛び立った。 |
✓単純方向補語の主な種類
「~来る」「~行く」の方向補語
方向補語 | 意味あい | 例文 |
来 lái | ~くる | 你过来。(こっちに来て。) |
去 qù | ~いく | 你拿去吧。(持って行っていいよ。) |
直接方向をあわらす直接的方向補語
方向補語 | 意味あい | 例文 |
上 shàng | あがる | 跳上汽车了 (列車に飛びのる) |
下 xià | さがる | 快臥下 (はやく伏せろ) |
回 huí | もどる | 钱退回了(お金がもどった) |
过 guò | すぎる | 小河流过 (小川が流れる) |
出 chū | 出る | 跑出 (走り出る) |
进 jìn | 入る | 走进房间 (部屋に入る) |
起 qǐ | 起きる | 拿起笔 (ペンを持ち上げる) |
开 kāi | 開く | 幕布拉开 (幕が開く) |
(2)複合方向補語
複合方向補語とは、「来」「去」と、直接方向を表す「上」や「下」などの補語を組み合わせて作る方向補語のことです。つまり、「上去」のように、補語の漢字が2つになるわけですね。基本形が「動詞+方向補語」ですので、例えば、「走过去」のように表し、「走り去っていく」「歩いていく」のような意味になります。
文法: 動詞+方向補語(直接的方向補語+「来」「去」方向補語) |
hái zǐ cóng wài biān pǎo huí lái le 。 孩子从外边跑回来了。 | 子どもは外から走って帰ってきた。 |
tā wèi le kàn wǒ zhàn qǐ lái 。 他为了看我站起来。 | 彼は私をみるのに立ち上がった。 |
✓複合方向補語の主な種類
「来」 | 「去」 | |
上 | 上来 上がって来る | 上去 上がっていく |
下 | 下来 下がって来る | 下去 下がっていく |
回 | 回来 戻って来る | 回去 戻っていく |
过 | 过来 来る | 过去 行く |
出 | 出来 出てくる | 出去 出ていく |
进 | 进来 入って来る | 进去 入る、入れる |
起 | 起来 起き上がる | 起去 起きる |
开 | 开来 来る | 开去 行く、去る |
方向補語とよく使われる主な動詞
方向補語は、上記のようないろいろな種類がありますが、例えば「走过去」の「走」のように一緒に使われる動詞として、「带」「拿」「跑」「飞」「回」などがあります。
2、方向補語の肯定文
それでは、具体的に文の作り方や方向補語の使い方について説明していきます。基本の形は、動詞+方向補語ですが、目的語によって語順がかわってきます。少し複雑ですが、例文をみながら覚えていきましょう。
(1)基本の文型
方向補語の肯定文では、基本形は「動詞+方向補語」となります。複合方向補語の場合は、動詞の後に方向補語が2つ並びます。
単純方向補語基本文法:動詞+方向補語 |
複合方向補語基本文法:動詞+直接的方向補語+「来」「去」の方向補語 |
xiǎo qū lǐ pǎo chū le yí gè rén 。 小区里跑出了一个人。 | 団地から1人の人がかけ出てきた。 |
rú guǒ yǒu kōng fáng wǒ xiǎng kuài diǎn zhù jìn qù 。 如果有空房我想快点住进去。 | もし部屋が空いていれば入居したのですが。 |
(2)語順について
方向補語では、動詞のその目的語により、またはその動詞が完了しているかどうかなどによって、語順が変わってきますので、注意しましょう。
方向補語が目的語の後
文法1: 動詞+目的語+方向補語 (複合方向補語:動詞+直接的方向補語+目的語+「来」「去」方向補語) |
動詞のあとに目的語を置き、その後方向補語をもってくる場合には、以下のような種類があります。複合方向補語の場合は、方向補語で挟まれることになります。どちらにせよ、方向補語が最後になる場合となります。
①目的語が動かせる物や人の場合
②目的語が場所の場合
① | qǐng měi rén dài yī fèn zī liào qù 。 请每人带一份资料去。 | 1人一部資料を持って行ってください。 |
② | tā huí yuè nán qù le 。 他回越南去了。 | 彼はベトナムへ帰っていった。 |
方向補語が目的語の前
文法1: 動詞+方向補語+了+目的語 (動詞+方向補語+目的語+了) |
方向補語が目的語の前にくるときには、以下のような場合があります。単純方向補語の「来」「去」以外の直接的方向補語の場合、目的語を持たないと文章として成り立たないケールが多く、方向補語が目的語の前にくることを覚えておきましょう。
①単純方向補語の文章で動詞が完了している場合
(「了」などで表されている場合)
②単純方向補語の直接的方向補語の文で目的語がある場合
① | hái zǐ dài huí le hěn duō zuò yè 。 孩子带回了很多作业。 | 子どもがたくさんの宿題を持って帰ってきた。 |
② | wǒ tiào shàng qì chē le 。 我跳上汽车了。 | 私は電車に飛び乗った。 |
どちらでもよい場合
複合方向補語の目的語がある文において、動作が完了している(「了」の漢字が入ってくる場合など)ときには、方向補語と目的語の語順はどちらが先でも大丈夫です。
dà jiā gè dài guò lái le yī dào cài 。 大家各带过来了一道菜。 | みんな1品ずつ料理を持ってきた。 |
dà jiā gè dài guò yī dào cài lái le 。 大家各带过一道菜来了。 | みんな1品ずつ料理を持ってきた。 |
3、方向補語の否定文
方向補語の否定文では、動詞の前に「没(有)」を置きます。方向補語は、動詞の補語ですので、その文の動詞を否定すれば、否定文を作ることができます。ただし、物事が完了していない場合には「不」を用いることもあります。
文法: 没(有)+動詞+方向補語 |
dàng tiān tā méi yǒu dài tā lái 。 当天他没有带她来。 | その日彼は彼女を連れてこなかった。 |
māo méi yǒu pá shàng lái 。 猫没有爬上来。 | ねこは登ってこなかった。 |
方向補語の文でも否定の「不」を用いるとき
方向補語の文でも「不」がある場合があります。これは、方向補語の動詞が完了をしていない場合など、例えば、子どもが親に部屋に「入ってこないで!」というときには、「不要进来!」というように、「不」を用いることもあります。
4、方向補語の疑問文
方向補語を疑問文にするときには、主に文末に「吗」をつける諾否疑問文を使います。もちろん、文の中に何か聞きたいことがあれば疑問詞を用いることもあります。疑問詞疑問文では、誰、何など質問する箇所にそのまま疑問詞を入れるとよい。
文法1: 動詞+方向補語+(了)+吗? |
xū yào dài zhè gè qù má ? 需要带这个去吗? | これを持って行く必要がありますか? |
shuí pǎo huí lái le ? 谁跑回来了? | 誰が走って帰って来たの? |
方向補語の基本
1、方向補語には単純方向補語と複合方向補語がある。単純方向補語には、「来」「去」の方向補語と、方向を直接的に表す方向補語がある。複合方向補語は、単純方向補語を組み合わせたもので、「直接的方向補語+「来/去」」の形となる。
2、方向補語は、「動詞+方向補語」が基本の形となる。複合方向補語の場合は、「動詞+直接的方向補語+「来/去」」となる。
3、方向補語は、目的語や動詞が完了しているかによって、語順が異なる。方向補語が目的語の後か、前か変わる。
否定文や疑問文について
1、方向補語の否定文は、動詞の前に「不」や「没(有)」をおく。
2、方向補語の疑問文では、文末に「吗」を用いる諾否疑問文や、疑問詞を用いる疑問詞疑問文がある。