簡体字と繁体字の違いとは?表記の違いや地域、歴史などの基礎知識まとめ

近年インバウンド客が増えている中、ホテルや飲食店、観光地などで「中国語対応が必要だ」と感じている方も多いのではないでしょうか。そんな時によくある疑問が、「中国語には『簡体字(かんたいじ)』と『繁体字(はんたいじ)』があるけど、どちらを使えばいいかわからない」というものです。

また、中国語を勉強している方の中にも、「簡体字」と「繁体字」の違いや、歴史、特徴を知りたいと思う方は多いでしょう。

そこで今回の記事では、「簡体字」と「繁体字」の違いや、使われている地域、歴史的背景といった基礎知識をわかりやすくまとめ、実際にどちらを使うのが適しているかを解説します。

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1 簡体字と繁体字の基本

中国語の漢字は「簡体字」と「繁体字」の2種類があり、どちらを使うかは国や地域によって変わります。
端的にいうと、「簡体字」は“簡”という文字が入っている通り、 伝統的な漢字を簡略化して画数を減らした漢字です。それに対して、 「繁体字」は伝統的な漢字で、画数が多いのが特徴です。
日本語でも漢字が使われていますが、日本語の常用漢字はどちらかというと「繁体字」寄りです。

(1)漢字の違いの比較表

以下、いくつか漢字の違いがわかる文字をピックアップして表にまとめました。

日本語簡体字繁体字

(2)主な使用地域と利用人口

 簡体字繁体字
主な使用地域中国本土、シンガポール、マレーシア台湾、香港、マカオ
利用人口(推定)約13億人約3000万人

※利用人口は各地域の人口と識字率をもとにした推定値です。

(3)歴史

中国の漢字は古代から長い歴史を持っていますが、画数が多く複雑なものも多いため、識字率が低いことが大きな社会問題でした。そんな中、20世紀前半、教育普及と近代化を目指して、 誰もが読み書きできるようにするための「文字簡略化」の試みが、知識人や教育者の間で始まります。草書や俗字など、民間で使われていた略字がベースとなりました。
1949年10月、毛沢東率いる共産党が中華人民共和国を建国。 毛沢東は「文字は改革しなければならない」と指示を出し、1952年に中国文字改革委員会が設立されました。「識字率向上」を重要政策に位置付け、文字改革の一環として、ローマ字で中国語を表記できるピンインや簡体字が導入されます。1956年には『漢字簡化方案』が公布され、段階的に教育や出版の現場で使われるようになりました。その後の検討や修正を経て、 1964年5月には『簡化字総表』が発行され、簡体字は中国全土で広く普及し、国民の識字率アップにつながっていきました。

こう見ると、「簡体字」の歴史はまだ半世紀ほどで、比較的短いことがわかります。

一方、香港(当時は英国領)やマカオ(当時はポルトガル領)、そして国共内戦で台湾に移った中華民国政府(国民党)の支配下には、中華人民共和国の行政権が及びませんでした。そのため、これらの地域では簡体字が導入されず、制定以前から使われていた伝統的な繁体字が、今でもそのまま使用されています。

2 字体以外の違い

「簡体字」と「繁体字」の違いは、漢字の字体だけにとどまりません。国や地域によって、同じ意味でも使われる用語が異なることがあります。

ここでは、 中国大陸で使われる中国語(普通語と呼ばれるもの)と 台湾で使われる中国語(台湾華語または國語と呼ばれるもの)の代表的な用語の違いをいくつか表にまとめました。

意味中国本土(簡体字)台湾(繁体字)
自転車自行车 zìxíngchē腳踏車  jiǎotàchē
タクシー出租车  chūzūchē計程車  jìchéngchē
エアコン空调  kōngtiáo冷氣  lěngqì
ポテトチップス薯片  shǔpiàn洋芋片  yángyùpiàn
ヨーグルト酸奶  suānnǎi優格  yōugé
テイクアウト打包  dǎbāo外帶  wàidài
契約書合同  hétóng契約書  qìyuēshū
トランプ大統領特朗普  Tè lǎng pǔ川普  Chuān pǔ

※今回は繁体字にも読み方を示すためにピンインを表記していますが、台湾ではピンインを使わず「注音符号」という独自の発音記号を使います。

3 どちらを使うべきか

これらの違いを踏まえた上で、結局「簡体字」と「繁体字」どちらを使うべきなのでしょうか?

大前提として、中国大陸の人々は「簡体字」を使いますが、多くの場合「繁体字」もある程度理解できます。逆も同様で、「繁体字」を普段使う中国語話者の中にも「簡体字」を理解できる人は一定数います。とはいえ、 相手を尊重するなら、その人が普段使っている漢字を使うのが最も親切です。

中国語学習者の場合、基本的には「簡体字」を学ぶことになります。ただし、香港や台湾に留学する人や、将来そこで働く予定がある人は、その地域に合わせた中国語(繁体字)を学ぶのがいいでしょう。今回は触れませんでしたが、香港やマカオにも独自の言葉や言い回しが存在します。

一方、インバウンド対応やビジネス翻訳では、 客層に応じて「簡体字」と「繁体字」を使い分けることが重要です。数字上では「簡体字」を使う人口が圧倒的に多いですが、日本を訪れる中国語話者の中には、台湾、香港、マカオ出身者も少なくなく、必ずしも大陸出身者だけが大多数というわけではありません。相手の出身地がわからない場合は、両方準備するのがベストでしょう。

また、翻訳を依頼する場合も注意が必要です。発注時は「中国語」と依頼するのではなく、「簡体字」なのか「繁体字」なのかを明確に指定しなければなりません。その場合は、ターゲットが中国大陸中心なのか、台湾、香港、マカオ中心なのかを事前に分析した上で決めることをおすすめします。

4 まとめ

今回は、「簡体字」と「繁体字」の違いについて、字体や地域、歴史、用語の差などを紹介しました。

使われる地域によっても様々な差がある「簡体字」と「繁体字」。相手や状況に応じて使い分けたり、違いや歴史的背景を理解しようとしたりすることが、よりスムーズなコミュニケーションにつながります。 筆者が中国語話者と交流してきた中でも、普段は「簡体字」を使う人が、SNSや趣味の場面では「繁体字」をあえて使うこともありました。つまり、使い分けは地域だけでなく、シーンや個人のスタイルによっても変わるのです。

今回の記事で紹介した「簡体字」と「繁体字」に関する基礎知識が、中国語話者とのコミュニケーションや話題作りのきっかけになれば幸いです。

参考資料: 『文字改革のあゆみ』上野恵司 『台湾における「簡体字論争」ー国民党の「未完の文字改革」とその行方ー』菅野敦志



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